富裕層への節税対策

公開日 : 2014年10月31日


 政府・与党は、富裕層の節税対策を強化する検討に入った。1億円を超える金融資産を持つ富裕層が海外に移住する場合には、株式などの含み益に所得税を課税する。フランス、ドイツ、カナダなどがすでに導入しており、日本では年間100人程度が対象になる見通しで、2015年度からの実施を目指す。

 国内に住む人は、株式売却益に所得税と住民税が合計20%が課税される。含み益のある株を保有したまま移住すると、日本では課税されず移住先の国が売却時に課税する。金融資産の売却益に課税しないシンガポールや香港、スイスに移住すれば税金がかからない。節税策としてこれらの国への移住が増えている。

 転勤などで海外に一時的に住み、日本に戻る人には課税しない。日本に戻る予定の人は納税の猶予を申告し、国が定めた期間内に株式を売却せずに戻れば課税を免除する。期間内に戻らない場合などは移住先の国の当局を通じて日本政府が税を徴収するようだ。

 金融所得の売却益が非課税のシンガポールや香港などで永住権を持つ日本人はここ17年で2.5倍に増加。シンガポールでは1,850人(2013年10月時点)と2.3倍に増え、香港でも2,150人と2.1倍になった。

 政府は海外に資産を移して節税や脱税をする動きにも監視を強化しており、海外にある金融資産や不動産を相続しながら相続税を申告しない人が増えているため、2014年からは海外に5,000万円超の資産を持つ個人に税務署への報告義務を課す制度が始まっている。

 2015年からは4,000万円超の所得にかかる所得税率が40%から45%に上がる。富裕層に対する課税強化を続ければ、富裕層が日本を離れる懸念がある。

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