資産隠し調査

公開日 : 2018年11月10日


 国際的な脱税や租税回避を防ぐために、CRS(Common Reporting Standard=共通報告基準)と呼ばれる新制度を使い、各国の税務当局は自国の金融機関に外国に住む顧客(非居住者)の口座情報を報告させ、年1回、参加国間で情報交換する。顧客の氏名、住所、口座残高、利子・配当の年間受取総額などが対象となる。

 国税庁が約50カ国・地域の金融機関にある日本人の口座情報約40万件を入手したことが分かった。

 租税回避地(タックスヘイブン)の情報も含まれており、今後、国境をまたぐ資産隠しなどの解明に活用されるようだ。
 
 2016年に公表された「パナマ文書」では、各国の首脳や著名人によるタックスヘイブンを利用した課税逃れの実態が表面化。海外投資が増え、一国だけで富裕層の資産を把握するのが難しくなるなか、他国からの大量の口座情報を入手することが可能となった新制度の効果が注目される。
 
 2017年に最初の情報交換があり、日本は2018年から参加。現時点で英領ケイマン諸島やパナマなどのタックスヘイブンを含む102カ国・地域が加わっている。米国は参加していない。
 
 2018年秋の情報交換で、日本は約50カ国・地域から日本人の口座情報約40万件を入手、逆に約50カ国・地域に対し約9万件の情報を提供したもよう。
 
 日本では国外に5千万円超の財産を持つ場合、財産内容を記す「国外財産調書」の提出が義務付けられている。2016年分の調書は約9千件にとどまっており、国税庁はCRSの情報と照合するなどして海外の「隠し資産」の発見に取り組む。

税理士
西原 弘二

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